「………、愁ちゃん」


暗いキッチンの中。
ただ、1人包丁を片手にぼんやりと立ち尽くしている。

「今すぐ会いに行くから」

包丁を強く握りしめて私はそれを心臓へと移動させる。

「…………」

これで愁ちゃん、会える。
また、傍にいられるんだ。
大好きな愁ちゃんの隣に。


ぐっと力を込めた瞬間…ー




「君が遠野奈緒」

ふと、背後から聞き慣れない声が聞こえ私はバッと振り向く。そこにいたのはきれいな顔をした男の子がにやにやしながら椅子に腰を掛けていた。

「…ー誰?」

私は睨むように奴を見れば、クスクスと気味の悪い声をあげてからそっと立ち上がり私の前まで歩いてくる。

「僕は、…そうだな
君たちのいう神様という存在さ」

馬鹿げた返答に私は更ににらみを利かせた。すると、やれやれとした表情をした後に

「本物だよ」

と、にこりと笑った。