教室に戻ると由紀が『どうだったぁ〜?』って聞いて来た。
由紀は小学校から一緒で何となく仲良くて何となく一緒にいる。だけどお互い私情は口にしない。寂しい時に『寂しい』なんて言ってる都合のいい仲。


「何処にも入れないらしいわっ。別にやりたい事もないから働こっかな。」

「マジで!ってゆうかやっぱりかぁ。美咲、頭悪いからねぇ〜。」

「当たり前じゃん!ベンキョーなんてしてないんだもんっ。あはは…。」


私はまた嘘をついた。
やりたい事がない?はぁ〜?!やりたい事ちゃんとあるし。
勉強なんてしてない?音楽の高校受験するために死ぬ気でしたじゃん。
結局、未成年だから親の同意なしでは受ける事すらできなかったんだけどね。

最近私は『嘘』って奴に縛られて身動きできなくなっている。
1つ嘘をつけば、その嘘を守る為にまた嘘をつく。そうやって何十にも重ねられていくうちに身動きできなくなってしまった…。


「今日、うちで遊なぁぃ?!」
ニコニコしながら由紀が聞いて来た。

「ゴメン。今日はパス。用事あるんだよね…。」

「なんか美咲、付き合い悪くなったよね!新しい男でもできた?」

「はぁ〜?新しい男ぉ〜?いるわけないじゃん!私は男なんて不必要なのっ!」

ちょっと強がる私を横目に由紀は『私は男ほしいなぁ。』なんて独り言の様につぶやいていた。