兄貴はかなりキレた様子で外へ飛び出した。

奥から出て来た女の人と男の人が袋を差し出してきた。
はっ?これって『シンナー』じゃん?
頭悪いケドそんくらい知っている。やばいんじゃなぃの?っと思ってチラっとリョウコおねぇに助けを求めた。
リョウコおねぇはすでに他の世界にトンでいた。虚ろな瞳をしてニヤニヤしている。
兄貴も外へ出て戻ってきてないし。
どうしよう…。

「はぁぃ。これ妹さんの分だよぉ〜。」

「あの…っ。私、やったこと…ないんですけど…。」

恐る恐る言ってみた。

「大丈夫さぁ。気持ちいいよぉ〜!嫌な事とか悩みとか全部無くなるんだからッッッ。」
「吸うだけだぜっ!やってみっ!?」

なんかもうやけくそだ。なるようになればいい。忘れられるなら、無くなるのなら。



私は言われた通りにおもいっきり吸ってみた。そのあとは覚えていない。
気がついた時には兄貴が隣にいた。


「お前バカか?!」

さっきまでとは違う。哀しい顔にみえる。

「タカにぃもやってんの?シンナー。」

「たまにな。でもやめてんだよな…。お前はもう二度とするな!」

「たぶん…。」

言葉を濁して答えた私に鋭く痛いとこをついてきた…。

「家でまたなんかあったんか?」

「思い出したくない!」

強く言い放った。ホントに思い出したくない。ホントに忘れたい。

「言え!」

渋っていたけれど兄貴のしつこさに負けた。

「私、いらない子なんだって。っていうよりいらない子だったんだって。産まれてきちゃいけなかったらしい。おかんに朝言われちゃった。」

「…。」
兄貴は眉間にシワを寄せるだけでなにも言ってくれない。