授業中も相変わらず曲のことばかり考えていた。


聖蘭音楽学園は一応大聖堂があり、音楽専門の学校といっても、専門学校ではない。


部活が音楽に関するものしかないということ以外は、普通の高校と同じ。


いわば、専門学校と高等学校が一緒になったような学園だ。


全体的に白で統一された教室の中。

俺の席は一番左の列の窓際、後方。

今は現代国語の時間。

先生には悪いが、俺は全然授業を聞いていない。

家に帰れば必ず家庭教師が待ってるんだ。

試験前だからな。

俺の家は一応裕福な家庭ではあった。

家は・・・家というより屋敷に近い。

使用人がいて、大きな庭もある。

外観、内観ともに洋風で、一つ一つの部屋が広い。

産まれたときから住んでいるにしても、普通の人たちとは違う環境で生活していると思う。


父は有名な音楽家、母は海外で活躍していたピアニストだ。

でももう、二人ともこの世にはいない。

父は、俺たちが10歳になった頃、病気で亡くなった。

母は、去年アメリカで起きたテロに巻き込まれて死んでしまった。

俺は

父が設立したこの学園を守りたい、音楽家になって、ここの責任者になってもいい・・・。


将来のことを考えては、一番初めにそう思うのだけど・・・。

時に

医者になりたい・・・

父を苦しめた病を治せる医者に、母を苦しめた怪我を癒す薬を開発する医者に。

俺の中で、二つの希望がそんな風にたびたびせめぎあうだ。


「・・・神咲、次のページ読んでくれ。」


窓際で気持ちよく風に当たりながら、ボーっとしていたためいひょうをつかれた。


「はい。えっと・・・」


少し教科書をめくりながら席を立ち、なんとなく耳で聞いていた適当なところから続きを読み始めた。



「はい、そこまででいいぞ、ありがとう。でも外ばかり見ないでちゃんと授業聞いておけ。」


「はい、すみません。」


静かに着席すると、隣の女子がクスクス笑いながら小声で話しかけてきた。