どんどん寂しくなっていってるんじゃないかな・・・。

いつでも何でも、言ってほしいのに。


そういえば最近の僕も、兄さんのことばかり心配してるような気がする。


窓の外、一直線に見つめて、向かいの校舎のA組の兄の顔を伺いながら、心の中で問いかけ続けているんだ。



だって僕ら四つの魂を分けた兄弟でしょ?

たまにだけどね、苦しいときや辛いとき、それが自分のことじゃないのに移ってきたりするんだよ?


兄さんならわかってるはずだよね。


幼い頃から、僕たちの異変を一番早く察知するのは兄さんだった。

親よりも先に・・・。

景が学校でいじめられてるときも、優衣が急に熱を出したときも、僕が怪我をして帰れ
なくなったときも・・・


いつも一番に駆けつけてくれたのは兄さんだった。

どうしてかな・・・。

僕らのことは、全部わかっちゃうのかな。

父さんも母さんも忙しいときは、不安にならないように寂しくないように、即興で元気になる歌を作って歌ってくれたりしてくれたこともあったよね。



僕はそんな家族思いで、いつも一生懸命の兄さんを尊敬してるよ。

誰にも優しくて、勉強ができて、音楽の才能も僕らの誰よりもある。

そして、音楽に対しても、何に対してもゆるぎない信念を持ってるよね。


・・・僕は覚えてるよ

僕をおんぶして帰ってくれたあの日のこと。

僕はぐすぐす泣きべそかきながら、君にしがみつきながら聞いた。


どうしていつもすぐ助けに来てくれるの?

って・・・。僕は兄さんをヒーローみたいに感じていたからさ。

笑うと思ったし、軽く聞いただけだったから、あんなこと言われてびっくりしたよ・・・。



「守ると決めたことは命を懸けて死ぬまで守る。父さんが一番大事だって俺に教えてくれたことだ。お前も、母さんも、優衣も、景も、皆俺が死ぬまで守るって決めたんだ。」



ねぇ・・・12歳で普通そんなこと言えるかな。


僕はね、そのとき何も言わなかったけど・・・

兄さんのたくましい背中におぶさりながら、また溢れ出した涙を必死に拭っていたんだよ。