「双子を捜している奴の傍に、その双子の片割れがいるとは、誰も思いはしないだろう?」
それに、と続ける。
「お前は正義感の強い奴だ。精霊使いであるため、僕は狙われている……そして僕には魔力がない、とでも言っておけば、その正義感を強く刺激する」
妖精に興味を持っているということも知っていたため、フェイは必ず、旅の誘いに乗って来るに違いない。
そこまで、ディオンは考えていたのだ。
「敵が来ても、お前が倒す。だから僕は安心して、月食の日まで過ごすことが出来る、ということさ」
結局、片割れであることを知られ、上手くはいかなかったが……。
「……ディオン」
ようやく、フェイは顔を上げる。
悲しそうな、けれど悔しそうな、そんな表情(かお)だった。
「お喋りはもう終わりだ。フェイ……先にお前から殺してやる」
言い終わるやいなや、ディオンは勢いよくフェイに襲い掛かる。
咄嗟にフェイは剣で防いだ。
ディオンと戦ったことなど、一度もないのは当たり前だが、彼の剣術が並み以上だということは、分かっている。