「 ・・・・あき 」
4月2日、午前10時。
水族館の前で1人、
受話器の向こうで笑う
彼を少し叱っていた。
『 なに?繭 』
「 なに、じゃないでしょ?
何で来ないの、あき 」
『 ・・・いや、だから・・・ 』
「 私、1人で行くの? 」
うん、としれっとした返事に
イラつきながらも、そういえば
初詣もこんな感じだったな、と
出てきたのは溜息だった。
「 ・・・電話、切らないでね 」
『 切らないよ、もともと
そのつもりだったからね 』
電話参戦だよ、と笑う彼に
何だそれ・・・と内心呆れながら
私は1人、水族館へ足を向けた。
入場券を買いながら
耳元で楽しそうに”早く行こう”と
子どもみたいにはしゃぐあきに
本当に一緒に居るみたいだ、と
苦笑しながら係員に見送られ
館内へと入った。