「 ・・・・・・嫌、嫌・・・ッ!! 」
忘れていた、・・・いや、
”預けていた”私の記憶が
どこからか流れ込んでくる。
お気に入りの白いコートが
赤く染まっていくのを
私はよく覚えていた。
さっきまで繋いでいたはずの手は
もう握り返してくれることはない。
今さっきまで”早く”と、”繭”と
私を急かし、名前を呼ぶ声は聞こえない。
温かいのに、瞬きをしない。
動かない、話さない。
段々と冷えていく彼の身体を抱きしめて
私は何度も謝り、そして泣いた。
ごめんね、ごめんね、と。
救急車が来て、あきと引き剥がされて
その瞬間に、私は気を失ってしまった。