急にゴッツの
顔が引きつる。


「な、なんだと・・・」


さっきまで勝ち誇っていた
男のものとは思えない声だ


「アンタがいるコトなんざ
とっくに分かってたさ
生憎俺もアンタと
同じ術師でね・・・」


それまでの気弱な俺は
見る影もなく、そこには
自信に満ちた俺がいる。


「ガキぃ!!嘘は止めろ
至って普通の少年が
禁忌を犯せる覚悟も
ないクセに!!」


そう言うとゴッツは
身構え飛びかかろうとする。

同じ心術の
使い手ならわかるが
相手がレベルの高い
術師だと精神を壊される。

つまり早く倒さないと
手遅れになるというコトだ。

というコトは奴は
俺の話を信じ切った。
そんな相手を陥れるのは
とても容易い。


「うぐッ、う、動かない
貴様一体何を・・・」


動かない足を
殴りつけながら
どうやら気付いたようだ。


「そうか・・・
掟術
【死者の枷】(デッドリィカース)
か・・・」


「誰も心術なんて
言ってないだろ??
俺は『同じ術師』
とまでしか言ってないさ
ゴッツ、貴様の
歩行を否定する」


「クッ!!騙したな!!!」


憐れな奴を嘲笑した
騙されるほうが悪いのだ。

弱い羊を狙い、決して
強者と戦おうとしない
下劣な輩には
それ相応の罰を
悪魔が与えないとな・・・。


俺はある種をゴッツに
植え込んだ。
人に寄生し栄養を奪う
魔界植物だ。
ものの十分で花が咲く。


「お前がバカにした
植物に殺されるなんて
傑作だな
精々植物と戯れてろ」


そう言い残すと
俺は闘技場へ向かう。


体の栄養を貪り
紅い花が顔を出す。
そして断末魔の悲鳴と共に
大量の石榴(ザクロ)が
咲き誇る・・・
血を浴びて真っ赤な
石榴が・・・。