そして俺は
そわそわしながら

手術室の前にいた




そこには
麻奈の両親
俺の両親
病院の先生方

みんながいた





癌のひとが
赤ちゃんを産むなんか
聞いたことがなく

すごいことらしい



麻奈の両親と
俺の両親は
初顔合わせで
おどおどしながら
あいさつをしていた






しばらく待った

















オギャーオギャーオギャーオギャー







元気な泣き声が
聞こえた








赤ちゃんが
産まれたんだ







赤ちゃん‥



みんな泣いていた


俺はその場に
倒れ込んだ

泣きくずれたんだ


麻奈がやってくれた

元気な赤ちゃんを
産んでくれたんだ

そう思うと
涙をこらえられなかった







看護士さんが来て

「元気な女の子ですっっ!」

と赤ちゃんを抱えて飛び出してきた




そして俺に


「はい
お父さん
落とさないでくださいよ」


と言って



赤ちゃんを渡された








そして俺は

「桜奈。
俺が父さんだぞ」


と言った





そう


赤ちゃんの名前


決めてたんだ



女でも男でも

俺らが出逢った
桜の木の下の
「桜」という文字を
いれること




そして
女の子なら
麻奈の「奈」をいれること



そして


「桜奈(さくな)」


かわいい名前だろ?









麻奈‥


桜奈は元気で
産まれてきたぞ