おばさんが、殺された……。

 背後から刃物で刺されて……殺された……。


 ──ドクン、ドクン、ドクン。


 り、お……。

 里桜を誘拐した犯人が……おばさんを殺った、のか……?


 ──ドクン、ドクン、ドクン。


「もしかして、里桜を誘拐した犯人が……殺ったんっすか……?」


 そう言う俺の声は、震えていた。


「分からない……。しかし、警察は里桜を誘拐した犯人が怪しいと見て、調査を続けるそうだ……」

「そうっすか……」


 おじさんの声も、震えている。今にも泣きそうな声だ。

 そりゃあ、そうだよな。最愛の妻が殺されたら……誰だって……。

 俺だって……おばさんが死んだなんて信じられない。信じたく、ない……。


「おじさん……。必ず、必ず!里桜を誘拐した犯人と、おばさんを殺した犯人を見つけ出しましょう!1人で怯えている里桜を……助け出しましょう!」


 暗い気持ちでいたら、ダメだ。

 なるべく明るく振る舞わないと……明るい気持ちでいないと、どんどん気持ちが暗くなって……いずれ身体を壊してしまう。

 そうなったら、里桜を助け出すことなんて出来ないっ!


「あ、ああ……。そうだな」

「では、俺は引き続き里桜を捜します」

「ああ……頼む……」


 活気のないおじさんの声を最後に、俺は電話を切った。

 こうなったら、のこのこと帰ってなんていられない。もう少しだけ、里桜の捜索を続けよう。