「……っ!」


 口にしてみて、私はあまりの美味しさに両目を見開く。まさかこんなにも美味しいと思わなかった。本当に料理が上手なんだなぁ、桐生さんは。

 こんなに美味しい料理が作れるのなら、恋人の1人や2人、いても全然おかしくないのに……。

 って、私のことを愛しているって言っていたから、例え誰かから告白をされても、断っているのかなぁ……?


「……口に合うか?」


 真っ黒な右目が、私の両目を見つめている。私は正直にうなずき、料理が美味しいことを伝えた。

 仮にまずかったとしても、美味しいって言わないと酷いことをされるんじゃないかって……殺されちゃうんじゃないかって……そんな考えがあるのは事実で、私は内心、まだ桐生さんのことを疑っている。

 世間的に許されないことをした桐生さんだけれど、昨日の桐生さんを見ていたら、そこまで疑っていいものなのかが分からなくなってきたよ……。

 ……しっかりしろ!私!桐生さんは周りの人と違って不思議なオーラが漂っているけれど、だからといって決して綺麗な容姿に騙されちゃいけない!

 ちょっとでも桐生さんの機嫌を損ねたら……私の命はないと思わないくらいの覚悟でここにいなきゃ。だって、私はまだ死にたくない。


「なら……良かった」


 目を細め、ふわりと笑う桐生さん。

 ……この人、笑うんだ。今まで笑ったところを見ていないから、笑わない人なのかと思っていた。