「すみません!ベラベラと話しすぎちゃって……」


 とりあえず、早急に謝った。絶対に鬱陶しがられているよなぁ……。


「……いや、いい。俺は急いでいるから、これで」

「あ……はい」


 男性はぺこりと小さく頭を下げ、大量の袋を持って歩き出す。

 ここから見る男性の後ろ姿は、どこか儚げに見えた。それは、少し身体に触れただけで、砂のように崩れていってしまいそうなほどに……。

 ……に、しても。

 今の男性……左目に包帯を巻いていたけど、何か怪我でもしたのか?

 その左目のことを気にしていて、なかなか片想い相手に告白が出来ない、とか?……いや、なんにせよ、俺には関係ないな。

 どうせもう会わないだろうし、俺は里桜のことだけを……里桜の無事だけを考え、願ってさえすればいいんだ。

 誘拐される前に見せてくれたかわいい里桜のかわいい笑顔を思い浮かべながら、俺は自分の家へと帰った。


●●●


「洋佑!おかえりなさい!里桜ちゃん、見付かった?」


 俺が玄関の扉を開けて中に入ると、今にも泣き出しそうなくらいに心配そうな表情を浮かべた母さんが立っていた。

 母さんは里桜がいなくなったことに関して、相当のショックを受けているらしい。