……なんていうか、瞳に陰を落としたかのような、光を宿していない瞳だった。


(なんか……やべぇ人っぽい)


 直感的にそう思ったが、俺はそれを表情に出さないように努力し、男性が落とした袋を差し出す。

 しかし、男性はそれを受け取りはせず、目を見開いたままジッ……と俺のことを見つめている。

 驚いている、というより……信じられないものを見るような目に似ているような……。なんだ……?俺の顔、何かついている?


「あの……?」

「……あ。どうも」


 俺が声をかけると、男性は俺が差し出した袋を受け取り、音もなく立ち上がる。さらさらとした黒い髪が揺れ、甘ったるいココアの香りが鼻をついた。


「それ。彼女さんへのプレゼントッスか?」


 俺のことを見開いた目で見ていたことに関しては……気にしないことにして、購入していた衣類のことが気になったので聞いてみる。

 女性ブランドの衣類を取り扱っているということは、当然、客も女性が多い。というより、女性しか利用しないイメージがある。

 俺からすれば、女性ブランドの衣類を取り扱う店に男性が入り、品物を選んでいる光景は、女性物の下着を買っている光景と同じように見えて仕方がないのだ。

 ……あくまでも、俺の感性だが。

 それなのに、平然と女性ブランドの店で衣類を買えるなんて、よっぽどそのプレゼントを渡す相手のことを大切に思っているのだろう。