いや、私は心配なんかしていないけどさ!ただ、ちょっと気になっただけなんだけど……さ。

 ……そうだよ!どうして私が犯罪者の心配なんかしなくちゃいけないんだ!これはあくまでも気になっただけなんだからっ!


「……何?」

「なんでもないですっ」

「……この左目のこと、気になるのか?」

「だから、なんでもないですっ」


 「ふーん……」と意味ありげに呟いた桐生さんは、私の顔に穴が空くのではないかと思うくらい、ジィーッと見つめてきた。


「……なんですか?」


 その視線に耐え切れなくなり、私はそう問い掛けてみる。すると桐生さんは、「篠原さんはかわいいなって思って」……と、さらりと言いのけてみせた。

 あまりにもさらりと言うものだから、私は一瞬、何を言われたのか理解が出来ず、ぽかんと口を開けてしまう。


「……はい? あの、今──」

「――この左目は、」


 え?無視ですか?いや、確かに左目のことも気になるけれど……さらりと“かわいい”とか言わないでください!私はぜんっぜんかわいくないですっ!

 そんな私の内心をよそに、桐生さんは左目を隠している包帯を左手で触れた。

 え……まさか言うつもり?私、知りたいとか聞きたいって言っていないのだから、無理して言うつもりはないと思うんだけれど……。


「……ただの怪我だ」

「……」


 ……。

 う、うん。そうだろうね。趣味で包帯を巻く人もいるけれど、桐生さんはそうは見えないもの。