今思えば、少し前から確かに世間はおかしく染まっていた。不気味な顔をかたどるようにくり抜かれたカボチャ、可愛くデザインされたコウモリやオバケの数々。それらしく紫色やオレンジ色に彩られていく町並み……。

 春香と別れ、殺され、心が死んでいた俺にはまったく興味の無かったものだし、この先、一生関わることのないものだと思っていた。

 関わったところで、何が面白いのか分からないし、たった一日の……いや、一夜のためにご苦労なことだな、と、どこか冷めた目で見ており、呆れている節もあった。

 ……というのも、もとはといえばハロウィンは向こうの国のもので、秋の収穫を祝うものらしい。カボチャの前はカブを使っていたりもしたようだ。現代の日本のように、面白おかしく仮装して騒ぎ立てるだけのものではなかったのだから、そういう反応をするのも無理はないと思う。

 ……の、だが。


「いいですねぇ、ハロウィン!今年ももうそんな季節なんですね〜」


 俺と里桜しかいない、白い家の中。

 俺の愛する彼女はベッドの上に座り込み、少し前に買ったピンクのうさぎのぬいぐるみを抱き締めながら、テレビの画面に釘付けだ。

 俺はそんな里桜を、床に置かれているクッション性のある座布団に座り込みながら(かわいいな)なんて思いながら見つめている。