そう思ったら、里桜の会社の人達のことなど一瞬でどうでもよくなった。

 これ以上、無防備な里桜をこの人達に晒していたくはない。早くここから里桜を掻っ攫いたい。掻っ攫って、閉じ込めてしまいたい。俺と里桜の2人きりの空間で、里桜をずっと独占していたい。

 ……それらの欲求だけが、俺の脳を支配したのだから。


「すみません。こいつは連れて帰ります」


 口早にそう伝えるや否や、俺は里桜の身体を抱き抱えた。世間ではお姫様抱っこって呼ばれているんだっけか、この抱き抱え方。

 するとまたヒューヒューと口笛を吹く輩がいたが、俺は無視して颯爽と店を後にした。

 車に乗せ、マンションに連れて帰ってきたのはいいものの……会社の飲み会に、里桜を行かせなければよかった。何がなんでも反対すればよかった。今になって、深く後悔している。


「んぅ~、ふらふらぁ~」


 ……どうやら、今の彼女はまともに立つことも出来ないらしいので、放っておくと危ないからとベッドの上に降ろした瞬間──。


「──っ?!」


 俺の首に両腕を回した里桜が、勢いよく身を乗り出してきた。かと思いきや、そのまま唇と唇が重なる。

 でもそれはほんの一瞬で、唇を離した里桜は、瞳を潤ませながら上目遣いで俺を見た。