「……篠原さんが、気に入るといいんだが……」

「……馬鹿ですね」

「……?」

「こんなにも高いものを、わざわざたくさん買うくらいなら、自分の好きなものを買えばいいのに……」


 本当に、この人は馬鹿だ。

 私を監禁してから告白をするんじゃなくて、道端で私に声をかけて、知り合って、仲良くなって……それから芽生える恋だってあるのに。

 ──そんな恋をしたなら、そうしたら、堂々と愛し合えただろうに。

 こんなこそこそとせずとも、きっと幸せな気持ちで堂々と愛し合えたのに。

 今、こんな状況じゃ……。

 例え私があなたを好きになったとしても、誘拐や監禁の罪で警察に捕まってしまうことに変わりはないから、愛し合えたとしても……一緒にはなれないのに。

 私は、そう思う。


「そうはいかない。君をいつまでも同じ格好で居させるわけにはいかない。……それに、君は女性だから」


 ……今のは、“女性はオシャレをしたい、オシャレが好きだから”という意味が篭められていたのだろうか?

 例え私がオシャレをしたとしても……ここから出られないのだから、意味のないことなのに。

 やっぱり、この人は馬鹿だ。


「……まぁ、とにもかくにも、ありがたく受け取っておきますね」


 一応、値の張る服だから……邪険に扱うのは、罪悪感がある。衣類の入った袋をベッドの足元に置き、私はちらりと桐生さんに目をやった。

 ……実は、昨日からずっと気になっていたのだが、桐生さんって左目の部分に包帯を巻いているけれど、怪我でも……したのだろうか。