「えー? だから酔ってないれすって……ちょっとぉ、田中さん!そんなところ触らないでくらさいよーっ」

「里桜ちゃんって意外と胸大きいよねー。彼氏クンにいっぱい育ててもらったのかなぁー?」

「そんなわけないじゃないですかぁ!一夜ひゃんはそんな人じゃあ……」

「じゃあ俺が代わりに……グヘヘ」

「ちょっとぉー!田中さん、変態親父みたいになってますよぉーっ!」


 ……ぷつん。

 頭の中の何かが切れるや否や、俺はすぐさまマンションを飛び出し、車を里桜たちがいる居酒屋へと発進させていた。

 運転している間も、盗聴器からの会話は逃さずに耳に流し込む。


「田中さん、その辺にしておいた方が……」

「おお、早苗ちゃん!飲んでるかぁー?」


 ……〝早苗〟?

 ああ、里桜と仲の良い同僚だったか。


「あ~あ、知らないですよ? 私。里桜をこんなに酔わせちゃって……」

「んぁー? 何がだい?」

「例の里桜のイケメン彼氏さん、今すぐにでも飛んできたりして~」

「はっはっは!馬鹿を言うんじゃないよぉ!そんなわけないだろ~、会話が筒抜けじゃあるまいしー」


 それが筒抜けなんだがな。

 さて……どうしてやろうか。いくら里桜の上司だからとはいえ、愛しの里桜を汚すようなマネはこの俺が許さない。