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「いひやひゃーんっ」

「……」


 ──と、思っていたのだが、目の前の現実を見た俺は、こればっかりは何がなんでも反対するべきだったと後悔している。

 時刻は夜。目の前には酒によりすでに出来上がってしまっている愛しの彼女。俺の名前を呼ぶその言葉は、呂律が回っていないため舌足らずになっている。

 どうしてこんなことになっているのかというと……今から約1時間前。

 彼女の様子が明らかにおかしいことに、盗聴器を通して気が付いた。


「えへへー、酔ってないれすよー」


 ……誰がどう聞いても、彼女が酔っていると分かる独特の口調や話し方。

 そこで俺は、はたと気が付くのだ。──そういえば、里桜の酔っている姿を見たことがない、と。

 普段と対して変わらないのか?それとも笑いや泣き上戸になるのか?暑いからと簡単に服を脱いだり、誰にも対してキス魔なんかには……ならないでほしい。否、なっていいわけがない。

 ひやひやしながら里桜と、里桜の周りにいる人達の会話に耳を傾ける。


「里桜ちゃん、酔うと色っぽいんだね~。いつもとぜんぜん雰囲気が違うから、ビックリだよ」


 ……なに?