ニコニコと微笑み、そう言い残した死神少年は、ふわりと夜の街へと消えていった。


「……お前に言われなくても、里桜は絶対に俺が守る」


 そう決意した瞬間だった、──ふと、里桜に名前を呼ばれた気がしたので、反射的にそちらを向くと……。


「今日の晩ご飯、何がいいですか?」


 俺は、自分の部屋のソファーに座っていた。

 さっきまでここに里桜はいなかったのに……死神少年という子供は? 一体何がどうなって俺はソファーに座って……。


「どうしたんですか? もしかして、何か夢でも見ていました?」


 ……夢? そうか、言われてみれば、夢だったのかもしれない。一般的に現実ではありえない出来事だったから。でも──。


「きゃっ?!」


 台所に立つ里桜を、背後からギュッと抱きしめる。ああ、驚く里桜もかわいいな。


「一夜さん……?」

「ん……こうしたい気分なんだ」

「もうっ」


 もちろん、照れている里桜もかわいい。どんな里桜もかわいくて、愛おしくて、俺はおかしくなりそうだ。……いや、もうすでに、おかしくなっていた。

 死神少年との出会いが現実か夢かなんてどうでもいい。里桜に対する想いが強まったのは、事実なのだから。


【了】