すべてがすべて、俺の心の中でごちゃごちゃに入り混じって、俺は里桜の肩で静かに涙を流した。

 しばらくそうしていた後、里桜は突然、ぽつりと呟いた。


「ごめんなさい。私、一夜さんを傷付けてしまったんですね……」

「いやっ、そんなことは……気にしなくて、いい」


 俺は頭を上げ、慌てて言う。

 俺は里桜を傷付けたくないと思うが、俺はいくら傷付いても構わない。それが里桜に関することなら、尚更だ。

 だからそんなに悲しそうな顔をしないでくれ。里桜には笑っていてほしいから……。


「気にしますよ。だって私達、未来を約束した仲でしょう……?」

「……!」

「一方的に守り守られの存在じゃなくて、支え合っていかなきゃダメだって、早苗に言われちゃいました。だから……“自分は傷付いてもいい”なんて、考えちゃダメです……」

「っ」


 里桜はもう、泣いていなかった。ふんわりと優しげに微笑み、両手を差し出して俺を抱きしめた。

 それは、そう。こんなことを思うだなんて俺には似合わないだろうけど、例えるなら、まるで天使のような……。

 俺はそっと里桜を抱きしめ返した。


「里桜。愛してる」

「私もですっ」

「俺以外の人のところになんて、行かせない。お前はずっと、俺の傍にいろ」

「っはい」


 里桜。お前はずっと、監禁されていればいい。――“俺”という名の檻に。


【了】