「この花、どこの花屋でも売っていなくて、司さんと一緒に……探し回っていたんです。今日は一夜さんの誕生日だから、どうしても今日までに見付けだしたくて……」


 ……先程司の言っていた“勘違い”の意味が、今、分かった。

 里桜は最初から司のもとへ行こうとはしていなかった。それどころか、俺のために色んな花屋に行って、この花を探し回っていたんだ。

 本当に俺は馬鹿だ。馬鹿野郎だ。


「一夜さん……っ?!」


 俺は目の前の愛しい小さな身体を抱きしめた。強く、強く。息が出来ないほどに、強く。


「すまない……っ。俺は……俺は、里桜が……俺から離れていってしまうんじゃないかって……。すまない……すまないっ……」

「一夜さん……」


 里桜の暖かい手が、俺の頭を優しく撫でた。とても、心地いい。


「私、一夜さんに嫌われちゃったのかと思っちゃいました……。でも、嫌われたわけじゃなくて、安心しました」


 里桜の囁くような優しい声も、心地いい。


「私は……何があっても一夜さんの隣から離れません。絶対です」

「里桜……」


 一瞬でも里桜を疑ったこと、里桜を信じられなかった自分への愚かさ、転々と店を周り、自分のために用意してくれたプレゼント……。

 今日、司が仕事を抜けたのは、ブローディアを売っている花屋を見付け、里桜に知らせたからなのかもしれない。いや、そうに違いない。