「と、とにかく!里桜ちゃんがそっちに向かってるんで、ちゃんと会ってあげてくださいッスよ?!絶対会ってあげてくださいッスよ?!俺からの発言は以上ッス!ではっ!……うひゃ~、道端で大声を出してる俺、恥ずかし……」


 最後の方は何やら小さな声でブツブツと言っている司だったが、俺はそれを聴くより先に盗聴器をベッドの端に放り投げ、玄関の扉を開けた。

 ――そこには、泣きながら息をきらしている里桜の姿があった。

 しかし、里桜はその涙を拭おうとはせず、青い花の束を俺に向かって差し出しながら、笑顔でこう言った。


「お誕生日、おめでとうございます、一夜さん……っ!」


 ――えっ?

 涙を流しながら笑顔を浮かべ、青い花の束を差し出してきた里桜。

 差し出してきながら、「お誕生日、おめでとうございます」と言った里桜。

 どう反応したらいいのか、どう対応したらいいのか、分からない。


「一夜さん。ブローディアの花言葉って、知っていますか……?」


 ブローディア?……普段の生活の中では聞かない花の名前だ。俺は素直に首を横に振る。


「ブローディアの花言葉は“淡い恋”、“受け入れる愛”。そして――“守護”。一夜さんにピッタリな花だと、私は思うんです」

「……里桜」