「げほっ、げほっ!ちょっ……桐生センパイ!いきなり何するんッスかぁっ?!死ぬかと思いましたよっ!」

「あ……ぁ……つかさ……悪い、俺……」


 「お前が里桜と一緒にいるのを見ていたら、突発的に」と続けて答えると、司はポカンと口を開けた。


「え……センパイ、嫉妬ッスか?」

「……悪いか?――だいたい、お前は仕事をすっぽかして何をやっている?」

「そ、それは……」


 視線をキョロキョロとさ迷わせ、口をごもらせ、焦っている様子の司。里桜に目を向けると、司と同じように答えづらそうにしていた。

 ……わかった。そういうことなんだな。

 里桜の様子がおかしかったのも、里桜の携帯のメールの件も、司が急用で仕事を抜けたのも、今回ここで2人で会って笑い合っていたのも……そういうことなんだな。

 わかった。すべて、わかった。

 やっぱり司に泣きを見せればよかったと後悔したものの、それだと里桜が悲しむのは目に見えている。

 俺は……里桜が幸せなら、それでいい。相手が司なのがちょっとばかり引っ掛かるが、里桜がそれを望むのなら受け入れるしかない。

 俺は、俺は……里桜を守れるなら、なんだっていいんだ。それこそ世界の嫌われ者、下僕や奴隷、なんだっていい。里桜を守れるなら、なんだって……。