頭にカッと血がのぼるのが……なんとなく分かって、考えるよりも先に手足が動いていて、気が付いた時には司の胸元を掴み上げていた。


「お前……自分で何をしでかしたのか、分かっているよな……?」

「ぐっ……あっ……きりゅ、センパ……いきなり、な、に……くるし……っ」

「俺の里桜に手を出しやがって……タダじゃ済まさないからな」

「は……ぁ……?」


 苦しそうに顔を歪め、必死にもがく司が滑稽で仕方がない。でも、仕方がないよな?俺の里桜に手を出したんだから。前からいけすかない奴だとは思っていたが……ようやく制裁をくわえ…――。


「――一夜さん!やめてください!」


 里桜の今にも泣きそうな声が隣から聴こえ、ふと、俺は我に返る。

 冷静さを取り戻し、司の胸元を掴み上げていた手の力が抜けていき、司を手放す。司はドサッという音をたてて地に落ち、尻餅をついた。


「……俺は……今……」

「お願いですからっ、手荒な真似は、やめてください……っ!」


 俺に抱き着いてきた里桜を見て、俺は危うく自分が取り返しのつかないことをしようとしていたことに気付く。

 里桜の呼び止める声が聴こえなかったら……俺は今頃……嫉妬と怒りに身を任せて……司のことを……。