けれど、仮にそうだとして、弁解する気力もないわけでして……。

 私の顔をただただ無言のまま見つめてくる一夜さんを、ぼんやりとした頭で眺めることしか出来ない。

 しばらく見つめ合った後、一夜さんは私の頭をぽんぽんと撫でた。


「アイツの言うことは気にしなくていいって、言っただろ?」

「……。一夜さんは……私とキス、したくないんですか……?」


 目を見開いた一夜さん。考えることも出来ず、思ったことが口からするすると零れ落ちていく。

 すべて風邪や熱のせいだ。それらのせいで、私はきっととんでもないことまで口走ってしまっているんだ。そうだよ、そうに違いない。


「……俺は、」


 しばらく無言のうち、一夜さんは重たそうにその口を開いた。


「里桜の嫌がるようなことは、したくない」


 悲しそうに顔を歪め、そしてどんな表情をしたらいいのか困惑しているのか、薄ら笑いを浮かべた。

 私は頭を動かすのが億劫なため、ゆっくりながらも首を横に振る。


「嫌じゃ……ないです……」


 ……もしかしたら、5年前の監禁をしていた時の反動で、私がそういう行為を嫌がるかもしれないって思って、1歩が踏み出せないでいるのかもしれない。