「食えるか?熱くないか?」


 私は口を開けてお粥の乗ったスプーンをくわえた。……大丈夫、食べれないほどに熱いわけじゃない。

 私がうなずいてみせると、一夜さんは安心したように小さく微笑む。そして、一夜さんの優しさに甘えるように、お粥を食べさせてもらった。


「……あとは薬を飲んで――と、その前に、何か食いたいものとかあるか?林檎とか、桃とか」

「今は、いい、です……」


 さっき、梨を食べたしね。


「分かった。それじゃあ次は薬だな」


 枕元に置いていた風邪薬に手を伸ばした一夜さんは、水のはいったコップと一緒に手渡してきた。私はそれらを受け取り、風邪薬を胃の中に収める。


「よし、熱さまシートは取り替えておいたから、後は横になっておけ。仕事が終わったらまた来る」

「はい……」


 私が弱々しくうなずくと、一夜さんは私の頭をぽんっと撫でてくれた。大きな手が心地好くて、ふわふわと夢の中へと誘われる。そして、自分の気が付かないうちに、私は再び眠りについていたのだった。


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「ん……」


 また、どれくらいの間、眠っていたのだろう。私は何かの気配を感じて目を開けると――すぐ目の前に、ニコニコと微笑んでいる司さんの姿があった。