「! こ、これって……」

「本当は仕事が終わったら渡そうと思っていたんだが……」


 そう言いながら、私の左手の薬指に指輪を通していく一夜さん。


「ちゃんと、形にしておきたかった。俺達は未来を約束した仲だって」

「一夜さん……!」

「俺が立派だと言われる人間になれたその時に、式をあげよう」

「はい……はいっ!」


 私は何度もうなずいた。

 嬉しくて、ただただ嬉しくてまた泣き出してしまいそうだったけれど、それをなんとか堪えて、笑顔で一夜さんに抱き着く。

 すると、一夜さんは私をその大きな腕で抱きしめ返してくれた。

 私は今の幸せを噛み締めながら、胸いっぱいに詰め込んだんだ。


【了】