思った以上に真剣な眼差しをしているものだから、不謹慎ながらもちょっとだけ笑ってしまった。その笑いを抑えた後、私は口を開く。


「すみません……。もう1つだけ、聞いてもいいですか……?」


 一夜さんはコクッとうなずく。


「どうしてあの場所にいたんですか?道に迷っていた女の人、ここのお客さんだったんですか……?」


 理由もないのに、休憩時間だからといって、人がたくさんいる大通りにふらっと行くとは思えない。

 一緒にいた女の人が“碧の森”のお客さんで、店を出る間際に道を尋ねられた……っていうのなら納得出来るのだけれど、どうやらそうではないらしく、一夜さんは首を横に振った。


「ちゃんと理由があって、あの場所にいた」

「……?」

「里桜。左手、出して」

「えっ、あっ、はい」


 言われた通り左手を出すと――、一夜さんはポケットから小さな箱を取り出し、パカッと開いた。そこには小さな宝石がキラキラと光る、シンプルな指輪が入っていた。