辺りを見渡し、台所への入口の向かい側の壁にある2つの扉に目が止まる。開けなくても分かる。1つはお風呂場へ続く扉で、もう1つトイレへ続く扉なのだろう。

 調べる必要は特にないかと思われたが、大人しくベッドの上で待つのは時間がもったいないし、何より、私の性に合わない。

 それに、幸いにも鎖の長さは足りている。これは、桐生さんがいない間に1人でも用が足せるようにと、桐生さんなりの気遣い……なのかもしれない。私は「はは……」と乾いた笑いを浮かべ、扉に手をかけた。

 ──がちゃっ。

 ノブを回して扉を開けてみると、私の思った通り、そこはトイレだった。もう1つの扉も同じように開けてみると、これまた私の思った通り、お風呂場だった。どちらも白が強調された小さな部屋という名の空間。

 ……つくづくと思うのだけれど、桐生さんは白が好きなのだろうか。


「……結局、時間が過ぎるのを待つしか、私には出来ないんだ……」


 そう思うことで、より一層つけられた鉄枷が重く感じた足を引きずるようにして、ベッドの上へと戻る。

 再び、ボーッとした頭で意味もなく天井を見上げる。こう静かだと、静寂に胸が押し潰されそうだ。なんとかして静寂を破りたい気になる。


「……歌でも歌ってみる?」


 まさか。

 自分に言い聞かせた自分の言葉に、再び乾いた笑いが喉から出てきた。