危険な薬は……例え入っていたのだとしても、入っていないと思い込むことにした。そう思い込まないと、口から戻してしまいそうだったから。

 コップに注がれていたお茶も飲み干し、「ふぅ……」と息を吐く。


「……さて」


 このままベッドの上で時間が経つのを待つのは退屈だったので、恐怖もあったけれど、もう1度だけこの白い部屋から出られないかとベッドから降りて歩き回ることにした。

 私が完食した焼き飯やお茶の入っていた食器、そして置き手紙以外は何も置かれていない机に、何も置かれていない棚。……変わった様子は、ない。

 窓やベランダからは向こうの景色が見えるものの、直接ガラスに触れることは出来ないために、外へは出られない。

 ……台所の方は、どうだろうか。私はベランダを背に、鎖をジャラジャラと鳴らしながら台所に近付く。

 一人暮らしには十分すぎる広さの台所。そこへ入ることは鎖の長さ上、出来ない仕組みになっていた。

 ……入ることが出来ない理由は、私が包丁で自殺か……はたまた家を燃やされないように、などと色々と考えられた工夫なのだろう。

 変な人だとは思ったけれど、こういう細やかなところは気が抜けていないみたいだ。入れない以上、調べることは出来ないため、仕方なく台所へ入ることは諦める。

 ……視界の右に見えるのは、玄関の扉。そこを開ければすぐそこは外なのに、鎖の長さ上、それは叶わない。