……それにしても、この焼き飯、美味しそうに見える。いや、実際……私を監禁するまでの間、一人暮らしをしていたのなら、ずっと1人で料理を作ってきたわけだし……美味しいのだろう。

 焼き飯を見ただけで、お腹が空腹を知らせるべく、鳴った。……これは、ずっと何も食べていないからだ。

 あえて手をつけず、このまま何も食べずに餓死するのも悪くないかもしれないが……お母さんやお父さん、恋人の洋佑が私を必死に捜してくれていると考えると、死んでいる場合ではないと思い止まる。

 “まだ”、私は桐生さんに何もされていない……と思うし、生きることを諦めてしまうのは、まだ早い気がする。

 大丈夫、私は必ず、生きてこの白い部屋から出てやるんだから……!

 危険な薬の存在を疑いながらも、私は皿の横に置いてあったスプーンを手にし、それで焼き飯を掬い上げ、ゆっくりと口の中に押し込む。


「……美味しい」


 思わず、そうつぶやく。それほどまでに、口にした焼き飯は美味しかった。丁度良い味付けがされている。ただの焼き飯のはずなのに、これほどまでに美味しく感じるのは……私が空腹だったからだろうか?

 空腹だったこともあってか、私は焼き飯を食べる手が止まらなかった。……そして、ご飯1粒さえ残さないくらい、見事なまでな完食っぷり。

 どれくらいがっついていたんだと、自分の行動に苦笑を浮かべる。