あ、あれ?私の思っていた言葉とは違う言葉が投げ掛けられた……?

 ――って、早苗の言った「誘拐されて監禁されたから男が怖い」っていうの、一般的にはそう考えるのが“普通”だよね……。

 やっぱり、友人の早苗といえど、言えないよ。いや、容易く人に言うべきことではないのかもしれない。

 ――「私を誘拐して監禁した桐生さんのことを、今も変わらず愛しています」、だなんて……。



 ……あれから、あの出来事から、5年と3ヶ月の月日が流れた。季節は夏が終わり、秋がやってきた。

 私はなんとか無事に高校を卒業し、こうしてOLという職に就くことが出来た。早苗という友人にも恵まれた。

 お父さんもあの出来事から立ち直ることが出来たのか、目立つ白髪を黒色に染め、今まであまり見せてくれなかった笑顔を頻繁に見せてくれるようになった。

 すべてが順調に進んでいる。順調に進みすぎて、逆に怖いくらい。

 でも、私は今のこの生活が好き。そりゃあ、仕事を失敗しちゃうことだってあるし、お父さんや早苗とケンカをしちゃうことだってある。

 ……それでも、それらを含めた今のこの生活が大好きなんだ。

 ……これ以上の幸せを望むことは、贅沢なことかもしれない。