時が経てば、人は何かを忘れる。人の脳は、忘れていくように出来ている。

 自由になって、ストックホルム症候群が治って、俺のことを恐怖の対象でしか見られなくなって、それでいつしか俺のことを忘れるのなら……。

 だから、それ以上の言葉を紡がせるわけにはいかなかったんだ。

 彼女には笑っていてほしい。

 俺が恐怖の対象になってしまうのなら、俺はもう彼女の前に現れてはいけないんだ。それが1番、彼女を“守ること”なんだ。



 それが俺に与えられた“罰”ならば、俺は甘んじて受け入れよう。



 俺のこの気持ちは、どれだけの時が経っても変わることはないだろう。

 彼女が俺のことを忘れても、俺は彼女のことを愛してるだろう。……いや、愛し続けるだろう。