そして、恐怖の対象でしかなくなったこと。桐生さんに対して恋愛感情を抱き、愛してしまっていること。

 ……お父さんは、知らない。


「いいよ。謝らないで。自分を責めないで、お父さん」


 今の私の胸の内を明かせば、お父さんを悲しませてしまうと思い、私はそれだけしか言わなかった。……言えなかった。


 ──そうして、月日が流れるのは早いもので、あっという間に時間は経過していった。

 洋佑がお母さんや春香さん、そして過去に何人もの女性を殺害したことが世間に公表された。

 過去に殺害された女性達は、洋佑なりの愛情表現で殺されて死んでしまった人達なのだろうか。

 彼女らもまた、私や春香さんと同じように怯えていたのだろうか。それとも、中にはその愛情表現を受け入れ、自ら殺されて死を望んだ人もいるのだろうか。……私には、分からない。

 行方不明になっていた洋佑の両親は、近くの山の奥で、2人並んで首を吊って自殺していたところを、1人の登山家が発見した……と、後から警察の方々から教えてもらった。