その後、私は代金を払い、お父さんと一緒に病院を後にした。

 久々に帰る家は静まり返っていて、お母さんはもういないのだと思い知らされる。自分の家なのに、自分の家ではないような、変な感じだ。

 洋佑はお母さんを殺したのは自分だって言っていた……これは真実なのだろうか。でも、洋佑がこんな嘘を吐くとは思えない。何を好んで、自分が犯罪者であることを誇らしげに語るというのだ。洋佑がお母さんを殺したのは……真実なのだろう。


「里桜」

「何?」


 玄関で靴を脱ぎ、リビングへと入る。背後からお父さんに声をかけられた。「おかえり」と言ってくれるお母さんは、もうこの世にはいない。


「小百合は……殺された」

「……うん」

「犯人は……本田くんじゃないかって警察の方々から聞かされて……俺は……。……すまない……」

「お父さん……?」

「正直、本田くんがこんなことをしただなんてまだ信じられん……。だが、本田くんが犯人なら、俺は……里桜と会わすべきでは……なかった……。すまない、里桜……。つらい思いをさせて……すまない……」


 お父さんは知らない。

 洋佑の本性を知って、私の洋佑に対する恋愛感情が冷めてしまったこと。