私は白井さんにお礼を言った。


「お礼なんていいのよ、私は当然のことをしたまでなんだから。それにしても、本当によかったわ~。里桜ちゃんが退院できて」

「学校に行けてなかった分、勉強しなくちゃいけないですけどね」

「大丈夫よ~!里桜ちゃん、頭良さそうだし、すぐにでも追い付くわ」

「ははは、がんばります」


 ぺこりと頭を下げると、白井さんはにっこりと笑った。


「それじゃあ、少しの間、外で待っていてもらえるかしら?」

「はい」


 私はもう一度だけ白井さんに対して頭を下げ、診察室を後にし、再び名前が呼ばれるのを待った。

 部屋の外には規則正しく椅子が並べられていて、患者さんが腰をおろして診てもらえるその時を待っている。

 その患者さんの中に、私を待つお父さんが混じって腰かけていた。


「どうだった?」


 私の存在に気が付いたお父さんは、心配そうに顔を歪めている。不安を感じさせないよう、私はそっと微笑んだ。


「問題はないって。すぐにでも退院出来るって、白井さんは言っていたよ」

「そうか」


 お父さんの顔が綻んだ。私はその顔を見て、自然と綻ぶ。……嬉しいんだ。今まで心配や迷惑をかけてしまっていた分、お父さんがこうやって嬉しそうにしてくれるのが。