「とにもかくにも、桐生が釈放されるまで、君は桐生との対面は一切出来ない。……それが世の決まりなんだよ」


 私はその言葉に、うなずくことしか出来なかった……。



●●●


「いいんっすか? 終身刑じゃなくて」


 ──病院の廊下にて。

 気弱そうな警察の人――安井(やすい)──は、体格のいい警察の人――剛田(ごうだ)──の方を向いて、遠慮がちに問うた。


「さぁな。どれが1番幸せな選択肢かなんて、俺には分からねぇよ」

「はぁ……」

「桐生は犯罪者だ。けどな、被害者が真っ直ぐな目をしながら犯罪者をかばうなんざ、2人の間によっぽどの深い絆やらなんやらがないと成立しない出来事だとは思わないか?」

「まぁ……」

「本田が小野町春香を殺害したことが事実なら、桐生が本田を殺害したのは正当防衛と見て良いと思うし、そうしたら桐生自身の罪も軽くなるだろう?」

「それは、そうっすねぇ」

「正当防衛なのだとして罪が軽くなりゃあ……終身刑にはならねぇよ」


 剛田はハッキリとそう言った。

 そんな剛田を見た安井は、(ああ、やっぱりこの人はすごい人だ)、(自分も見習わなければいけないな……)と、胸の内で強く思ったのだった。