白井さんは、「やってしまった」と言わんばかりに自分の口を押さえたけれど、時は既に遅し。私は聞いてしまった。分かってしまった。桐生さんは……。


「……生きて、いるん、ですか?」


 病室がシンと静まり返る。聴こえるのは、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッと鳴る自分の心臓の音。

 桐生さんは手術が終わって一命をとりとめ、生き生き……としている?今、確かにそう言ったよね?“桐生さんは生きている”って、白井さん、そう言ったよね?

 頬にあたたかい何かが伝った。言わずもがな、それは涙。私は自然と嬉し涙を流していた。

 桐生さんは生きている!生きているんだ……!良かった……本当に良かった……っ!

 そんな私を見た2人は、ギョッと驚いたようなリアクションをとった。


「白井先生!感情が高ぶってどこか悪い部分が悪化したらどうするんだ!」

「ごっ、ごめんねっ? 泣かせるつもりはなかったのよ……」


 怒る綾部さんと謝る白井さんに、私は首を横に振った。「私は大丈夫だから」、「謝らないでほしい」という意味をこめて。


「私、嬉しいんです……。桐生さんが無事だって知って……」