……それにしても、今の白井さんの「変態という人種」っていうちょっと酷い言葉に対して、何も反応しない綾部さん。

 白井さんに言われ慣れている?それとも、気にしていないのかな?それほど2人がいる時間は長いということなのだろうか。


「今、言いかけたことは、彼についてだろ? 勿体振らずに里桜ちゃんに教えてあげたらどうだい?」


 綾部さんが白井さんにそう言い聞かせるけれど、白井さんは言おうかどうしようか悩んでいるみたい。

 それほどまでに悩むぐらい、私には言いにくいことなのだろうか……。

 しばらく私の両目を見つめた白井さんは、やがて大きく深呼吸をした。


「……分かった。話すわ。こんなこと、ただの医者である私が言っていいのか分からないけれど」


 ごくり。私は無意識に生唾を飲み込む。


「私、数年前にね、――桐生さんを診ていたことがあるの」


 ……えっ?


「眼球を……その、自分の手で、指でえぐった……とか言っていてね」


 そっ、それって……。

 ふと、桐生さんが言っていたことを思い出す。洋佑から春香さんを守れなくて、それの罪滅ぼし……って、言っていた。