「……ねぇ、里桜ちゃん」


 白井さんが何やら神妙な面持ちで声をかけてきたため、私はドキドキしながら次の言葉を待った。


「……いえ、やっぱりなんでもないわ。ごめんなさい」

「え? あ、そうですか……?」


 なんだろう?何か言いたげだったようにも見えたんだけれど。

 話そうと口を開けてしまったにも関わらず、躊躇してしまうぐらいに言いづらいことなのだろうか?

 何を言いかけたのか気になるけれど、無理に聞いたらいけないよね……。


「言わなくていいのかい? 彼のこと」


 途端、綾部さんが白井さんの顔を覗き込みながらそう聞いた。

 ……って、えっ?


「ちょ!バカ!シーッ!」


 彼のこと……?


「か、彼って、もしかして桐生さんのことですか?!それとも洋佑?!教えてください!2人は……2人はどうなったんですかっ?!」


 お父さんは黙って首を横に振った。

 この2人も同じような反応をするのだろうか?それほどまでに、私には言えないことなのだろうか?

 私はただ、本当のことが……真実が、知りたいだけなのに……っ!

 真実を知れない歯痒さに、私は無意識の内に歯を食いしばる。