するとお父さんは、心の底から安心したように長い息を吐いた。


「お前は3日間も眠り続けていたんだ。よかった、目が覚めて……。このまま目が覚めなかったら……俺は……!俺はっ!」


 お父さんは目頭を手で押さえ、それ以上は何も言わなかった。……いや、言えなかったという方が正しいかもしれない。

 娘に自分の涙を流す姿は見せられないと、父親なりのプライドがそれ以上の言葉を紡ぐことを許さなかったんだ。

 ……そっか、私は3日間も眠り続けていたんだ。長いようで短い夢を見ていたような気がする。その夢は優しくて、あたたかくて……。

 ……“優しくて、あたたかくて”?

 ……春香、さん。

 その瞬間、私の頭の中に、眠り続けるより前の出来事の1つ1つが、閃光のように走り抜けた。

 私が桐生さんに誘拐され、監禁されていたこと。洋佑が助けに来てくれたこと。

 でも、私の一言と態度で洋祐の本性を露わにさせてしまい、殺されそうになったこと。そこに桐生さんが助けに来てくれたこと。

 ……2人は争い合い、やがて倒れ、目を閉じ、動かなくなってしまったこと……。

 春香さんの夢のこと。

 ──そして、いつの間にか私は、桐生さんのことを愛してしまっていたこと。