お父さんの頭は私が最後に見た時よりも白くなっていて、酷く心配させてしまったのだとぼんやりとした思考ながらも、申し訳なさに駆られる。


「ここ……は……?」


 口から出た自分の声はいつもより弱々しいく思えたが、それは、私自身が目を覚ましたばっかりだからだろうか。


「里桜……!よかった!ここは病院だ。お前は雨の中で気を失っていて、そこへ救急車がやってきたんだ」


 久々に聴いたお父さんの切羽詰まった……けれど、嬉しそうな声。そっか、私、気を失っていたんだ……。


「びょう……いん……」


 言われた言葉の意味を頭はすぐには理解してくれず、お父さんの言葉を、オウムのように頭の中で何度も繰り返す。

 びょういん……びょういん……気を失っていた……ビョウイン……。

 ──病院。

 目だけを動かし、辺りを見渡した。

 どうやら病室の窓際の置かれているベッドの上で私は眠っていたようで、右に目をやると窓の向こうに青空と、雲で見え隠れする太陽が見えた。

 太陽が上の方にあるということは、今は昼頃なのだろうか。


「里桜。自分のことが分かるか? 俺のことが分かるか……?」


 お父さんの言葉に、私はコクッとうなずく。