「本当の自分を見せてくれたということは、少なからず見せた相手のことを心の底から信頼しているということでしょう? ……だから、少しだけ、嬉しかったの」


 「自分は全然、苦ではないよ」と言わんばかりにまた微笑む春香さんに、私は胸の奥がキューッと締め付けられるように痛んだのを感じた。

 すると、何かに気が付いたのか、ハッとした春香さんは慌て気味に話す。


「私のことなんてどうでも良いわよね!話す時間があまり残されていなかったんだわっ」


 それから私の両肩の上に自らの手を置き、言葉を続ける。


「里桜ちゃんに伝えたいことがあるって、言ったわよね? ……それはね、」

「……?」


 春香さんは優しく微笑む。


「一夜くんのこと……受け入れてあげて、なんて、無茶なことは言わないわ。少なからず私は受け入れてあげられなかったんだから。里桜ちゃんにその役を押し付けようとは思っていないわ。

 ……ただ……誘拐されて監禁されて、この上ないほどの恐怖を味わったでしょうけど、……それでも、桐生一夜という男の存在を否定することだけは……やめてほしいの……」


 春香さんは……きっと桐生さんのことも、本当に愛していたんだろうな。