「ええ、そうよ。私の名前は、小野町春香。……言わなくてももう分かっていると思うけれど、かつて一夜くんと付き合っていて、そして……洋佑くんとも付き合っていて……洋佑くんに殺されちゃったの」


　悲しそうに目を細める春香さん。

　見ていたら分かる。春香さんがどれだけ２人を愛していたのか。そして……愛していた洋佑に殺されて、とても悲しかったのかも。


「……一夜くんも洋佑くんも、決して悪い人ではないわ。２人は２人なりの愛し方を貫いただけだもの。……私が……それに、その愛の重さに応えられなかっただけ……」

「春香さん……」


　なんて声をかけたらいいのか分からず、私は一言、春香さんの名前を呟く。


「洋佑くんと付き合いだしてすぐ、私は毎日のように暴力を振るわれていたけれど、私は洋佑くんのことを本気で愛していたから抵抗なんて出来なかった……。笑って、“痛くないよ”って。ふふ、惚れた弱みというやつかしらね？　バカみたいでしょう？」

「……」

「洋佑くんが本当の自分を見せてくれた時……とても、とても怖かったけれど、本音を言うと、少し嬉しかったの」

「え？」


　嬉しかった……？