けれど、桐生さんが喋ってそれ以上傷口が開かないように、私はその言葉に何も言い返さなかった。

 私が何かを喋ることで、桐生さんはまた何かしら言葉を返して来るだろうから。……傷口が、開いてしまうから。


「もう、いいですから……何も喋らないでください……。傷口が開いちゃいます。もう少しで救急車が到着しますから……!」

「……まさか……しのはらさんに……たすけられるとはな……なさけない……」

「っ桐生さん!」

「……しのはらさん……さいごに……これだけ……いわせて……ほしい……」


 さ、さいご?!まさか、死んじゃうつもり?!だから、私はそんなこと許さないよ?!桐生さんが死んじゃうだなんて……私……許さないよ……?!


「嫌ですっ!聞きたくありませんっ!私は桐生さんが死ぬのなんて許しませんっ!だって、だって私は……」


 それ以上の言葉を言おうとしたけれど、先程桐生さんに人差し指を突き付けられて制止させられたこともあり、言えなかった。

 そのことを知っているのか、桐生さんは何も聞いてこない。代わりに、自分の言葉を続けた。