「それっ、里桜が帰って来ていないって、一体どういうことスか?!」


 おじさんに向かって、思わず興奮気味に問う。

 なるほど。おばさんの様子がおかしかったのも納得がいく。


「俺達にも何が何だか分からない……。しかし、居残りや友達の家に泊まったりするのなら、里桜は必ず携帯で連絡を寄越すんだ。それなのに、こんな時間なのにも関わらず連絡は無いし、帰っても来ない」


 携帯電話を耳元に当てながら、俺は目だけをちらりと動かし、時計に目をやった。

 ……22時38分……。

 確かに、この時間ならとっくに家に帰っていてもおかしくない時間だ。

 いや、むしろ、帰っていなくてはいけない時間だ。

 それなのに、連絡もなしで、まだ帰って来ていない……だと?


「もしかしたら、彼氏である本田(ほんだ)くんの家にいるかもしれないと思い、こうして電話をかけたわけだ……」

「そうだったんッスか……。……何か、良からぬ事件に巻き込まれたんでしょうか……?」

「……そう思いたくはないが……こうなったらやむを得えん。俺はこれから、警察に捜索依頼を出そうと思っている」

「!」


 サァー……と、俺の顔は青ざめていく。

 まさか、本当に里桜は良からぬ事件に巻き込まれたのか?

 家出……なんていうことはないと思うから、なんらかの事故に巻き込まれてしまったのか……それとも、誘拐、とか?

 ……誘拐?誰が、俺の、里桜を?