篠原さん……?何を……言っているんだ?その言葉の、意味は……?

 肩を震わせながら泣く彼女。

 ……俺がいなくなる夢を見た?……俺がいなくなって悲しい?……何を、言っている?とにかく、何か言わなければ。


「篠原さん。俺はここにいる。……篠原さんが望むのなら、俺はどこへにも行かない。いなくなんて、ならないから。傍にいるから」


「うっ……ひっく……うぅ……っ」

「だから、泣き止め。悲しいことなんて……ない。そうだろ?」


 篠原さんは袖で涙を拭きながらコクンッと頷く。すかさず、俺はもう片方の手の指で涙を掬うようにして拭った。


「手を繋いでいてやるから。だから、安心して眠れ」


 篠原さんの手を繋ぎながら言うと、篠原さんは穏やかな表情をしながら目をつむり、やがて、就寝した。

 俺もソファーで寝ようと思ったが、ここで手を離したら、篠原さんはまた悪夢を見てしまうかもしれない……そう思うと、手が離せなかった。


「こんな日も……いいか」


 自分に言い聞かせるように呟いた俺は、篠原さんのおでこにそっとキスを落とすと、座って手を繋いだそのままの状態で、目を閉じたのだった。