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 ──ふぅ……と、ゆっくりと溜め息を吐いた俺は、篠原さんがゆっくりと目を開けたことに気が付いた。


「すまない。起こしてしまったか?」


 起こしてしまわないよう、配慮をしていたつもりだったのだが。


「……いえ……夢を、見ちゃって」

「……夢?」


 ベッドの上で小さく笑った篠原さんは、「楽しい夢を見ていたんですけど、いつもいいところで起きちゃうんですよね……」と、目を擦りながら言った。

 ……何故、嘘をつく?

 ソファーから立ち上がった俺は、そっと篠原さんの傍へと寄る。

 何をされるのかと身体を強張らせている篠原さんの頭を、俺はそっと撫でた。刹那、篠原さんはキョトンとする。


「大丈夫だ。篠原さんの家族は全員生きているし、……本田洋佑だって生きている。だから、安心しろ」


 それを聞いた篠原さんは、目を見開きながらポロポロと泣き出す。篠原さんは怖い夢を見ていた。だから、目が覚めた。……それくらい、分かる。

 ……だって俺は、篠原さんのことを愛しているのだから。


「ちが、違う、んです……」


 え?


「桐生、さん、が、いなくなる、夢を見ちゃ、って……悲しく、て」

「っ!」